こんにちは、なおじです。
2026年2月19日(現地時間)、ミラノ・コルティナ冬季五輪フィギュアスケート女子フリーが行われました。
SP3位だったアリサ・リュウ(米国・20歳)が合計226.79点で逆転金メダルを獲得しました。
演技の美しさも注目されましたが、なおじが今日書きたいのは「勝利の裏にある家族の物語」です。
天安門事件で亡命した父の娘が、20歳で世界の頂点にたったんです。

この記事でわかること
- SP3位からの逆転金メダル・坂本花織との1.89点差の経緯
- アリサ・リュウが13歳でデビュー、16歳で引退、20歳で頂点に立つまでの軌跡
- 父アーサー・リュウが天安門事件に関わり米国へ亡命した経緯
- 米司法省が告発した「スパイ監視」と北京五輪での「誘拐未遂」の事実
- 1989年天安門事件とは何だったか・元社会科教師が深掘り解説
- 中国のSNSで「劉美賢」として2位にランクインした複雑な背景
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SP3位から226.79点で逆転金
第3グループで首位に立つまでの流れ
SPで坂本花織選手(77.23点)、中井亜美選手(78.71点)に次ぐ3位(76.59点)でフリーに臨んだアリサ・リュウ。
ゴールドの衣装に身を包んで笑顔でリンクイン。
すべてのジャンプをきれいに着氷し、爽快感あふれる音楽に合わせて楽しさが体からにじみ出るプログラムを披露。
会場のボルテージは最高潮になりました。
坂本花織との1.89点差という緊張感
アリサ・リュウの合計226.79点に対し、坂本花織選手は224.90点。
その差は、わずか1.89点。
フィギュアスケートは加点・減点の積み重ねで0.1点単位が勝負を分ける競技です。
「わずか1.89点」というのは、連続ジャンプ1本の判定差ほどの数字。
坂本選手の「完璧に決めたかった」という言葉が、余計に胸に刺さりました。
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アリサ・リュウとはどんな選手か
13歳・100点越えで衝撃デビュー
アリサ・リュウは2006年8月8日生まれ、カリフォルニア州出身の20歳です。
2019年、13歳で全米選手権に出場し、シニアデビューながら100点を超えるスコアをマーク。
「天才少女」として一気に注目を集めました。
2022年北京五輪にも出場しています(7位)。
16歳での電撃引退・そして復帰
北京五輪の翌月、世界選手権で3位を獲得した直後の2022年4月。
アリサ・リュウは自身のインスタグラムで「スケートの目標が達成できました」と現役引退を電撃発表したんです。
まだ16歳でした。
その後、約2年半のブランクを経て2024年3月に復帰を発表。
「引退は正しかったと思う」という言葉が印象的だった‥。
一度やめて、戻ってきて、そして金メダル。
この構造は、なんというか「スポーツの本当のところ」を見せてもらった気がします。
父アーサーが天安門事件で亡命した経緯
中山大学で民主化デモを組織した学生だった
アリサ・リュウの父、アーサー・リュウ(劉俊)は中国・四川省出身。
1989年の天安門事件の際、広東省にある名門・中山大学に在籍しており、民主化デモを組織した一人だったと、米メディアが報じています。
その後、香港経由で中国を脱出し、米国に亡命。
カリフォルニア州で弁護士の資格を取得し、アメリカで新しい人生を始めました。
アリサはそのアーサーの最初の子どもです。
今も続く中国当局の監視と「誘拐未遂」
アリサ・リュウの一家が中国側の監視を受けてきたのは、現在に限った話ではありません。
2022年3月、米司法省は中国政府の指示を受けてアーサー・リュウ父子を監視していた中国人スパイ5人を告発しました。
父は監視リストで「反体制派3」、アリサは「家族」という記号で管理されていたのです。
さらに、2022年北京五輪フリーの翌夜。
アリサはカフェテリアで見知らぬ男性に「家に来るよう誘われた」と父に報告しています。
これを受けて米国務省と米オリンピック委員会は、北京五輪期間中にアリサの周囲に警護員2名を配置。
「ちょっと怖くて刺激的だった」というアリサの言葉の裏には、このような具体的な経験があったんです。
中国SNSで「劉美賢」として2位にランクイン
金メダル確定後、中国のSNS・ウェイボーのホットアクセスランキングで「劉美賢(リュウの中国語名)が金メダル」が2位にランクインしました。
父が民主化運動に関わり亡命した家の娘が、中国で熱狂的に祝われる。
この複雑さが、現代の中国と世界の関係を象徴しているようで、なんとも言えない感情になります。
元教師が深掘り:天安門事件とは何だったか
胡耀邦の死が引き金になった
1989年4月、改革派として知られた中国共産党前総書記・胡耀邦(こようほう)が急死します。
民主化に理解のあった胡耀邦を追悼するため、学生・市民が北京の天安門広場に集まりました。
最初は追悼集会だったんです。
しかしそれはやがて、政治の民主化・言論の自由・腐敗撲滅を求める大規模な抗議運動に発展していきます。
全国100都市以上に広がったデモ
1989年5月、天安門広場のデモは全国的な規模に拡大。
100都市以上でデモが起きたと報告されています。
参加者は学生だけでなく、労働者・知識人・ジャーナリストにも広がりました。
民主化・人権・言論の自由を求める声が、中国全土を揺るがしたのです。
6月4日・戦車が民衆に向かった日

1989年6月3日夜、中国政府は人民解放軍に天安門広場への進軍を命じます。
戦車・装甲車・武装兵士が動員され、デモ参加者を武力鎮圧。
翌6月4日にかけて、多数の死傷者が出ました。
犠牲者の数は今も中国政府によって公表されておらず、数百人〜数千人とも言われています。
「タンクマン」と呼ばれる、戦車の前に一人で立ちはだかった男性の写真が世界中に衝撃を与えました。
事件後に逮捕・亡命が続いた
事件後、政府は全国に戒厳令を発令。
民主化運動に関わったと見なされた学生・知識人・ジャーナリストが一斉に逮捕。
多くの活動家が長期拘禁・国外追放・亡命という道を選ばざるを得なくなります。
父アーサー・リュウが香港経由で中国を脱出したのも、まさにこの流れの中の出来事です。
元社会科教師として感じること
この事件を中学校で、直接授業で扱うことはほとんどありませんでした。
しかし、なおじは「自分の意見を言う自由がない社会」の怖さという観点については、歴史授業全般で生徒達に考えてもらうようにしていました。
生徒たちは最初、ピンとこないことが多かったかもしれません。
でも「もし今日の自分の発言が明日逮捕の理由になるとしたら」と問いかけると、途端に顔色が変わります。
自由というのは、なくなって初めてその重さに気づくものだと思います。
アーサー・リュウが命がけで逃げたのは、その「自由」を求めてのことだったはずです。
そしてその娘が、自由の国で金メダルを取ったのです。
—亡命の 父の背中を 金が越え—
元教師が見た「逆境からの逆転」の構造
引退・復帰・金メダルの3段階
アリサ・リュウの競技人生を整理すると、こうなります。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2019年 | 13歳・全米選手権で衝撃デビュー |
| 2022年2月 | 北京五輪7位 |
| 2022年4月 | 16歳で電撃引退 |
| 2024年3月 | 復帰を発表 |
| 2026年2月 | ミラノ五輪・逆転金メダル |
16歳での引退を「正しかった」と言える選手が、20歳で頂点に立つ。
この構造、なおじはとても興味深いと感じています。
一度折れた子が化ける理由
バスケットボール部顧問として十数年、試合の現場を経験してきました。
一番強い選手とは、「一度心が折れても、それでも戻ってきた選手」でしょう。
折れないまま走り続ける選手は、どこかで限界が来る。
一度立ち止まって、また走り始めた選手は、走る理由が変わっている。
アリサ・リュウの「また滑りたい」という気持ちで復帰した姿は、まさにそこ。
日本人選手が敗れた、という悔しさも確かにありました。
しかし、アリサ・リュウ選手の歴史を調べた今、アリサ選手に心からの祝福を贈りたいと思っています。
おめでとう。
この記事に関するQ&A
Q1:アリサ・リュウはどの国の選手ですか?
A:米国代表です。中国・四川省出身の父アーサー・リュウと代理母の間にカリフォルニア州で生まれました。
Q2:なぜ16歳で引退したのですか?
A:北京五輪・世界選手権を終えた2022年4月、インスタグラムで「スケートの目標が達成できました」と引退を発表しました。燃え尽きと目標達成感が重なったタイミングだったと本人は語っています。
Q3:天安門事件はいつ、なぜ起きたのですか?
A:1989年4月〜6月に中国で起きた民主化運動と、それに対する政府の武力弾圧です。改革派総書記・胡耀邦の死をきっかけに学生・市民が天安門広場に集結し、6月4日に軍が武力鎮圧を行いました。犠牲者数は今も公表されていません。
Q4:スパイ監視とはどういうことですか?
A:2022年3月、米司法省が中国政府の指示で父アーサー・リュウを監視していたスパイ5人を告発しました。父は「反体制派3」、アリサは「家族」という記号で管理されており、北京五輪中には米国務省が警護員を配置する事態にまで発展しています。
Q5:なぜ中国のSNSでアリサ・リュウが話題になっているのですか?
A:中国語名「劉美賢」がウェイボーのトレンド2位に入りました。父が天安門事件で亡命した経緯がありながら、中国系の彼女の勝利を「誇り」として受け取る中国ユーザーがいる一方、複雑な感情を持つ人もいるとみられます。
あなたは今日のアリサ・リュウの金メダルと、父の物語をどう受け止めましたか?
スポーツの話だけでは収まらないこの感情、コメント欄で教えてもらえると嬉しいです。
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筆者紹介|なおじ
なおじは元社会科教師として教育現場に35年間携わり、指導主事を5年、校長を11年務めました。
退職後もボランティアで子どもたちに学習を教えています。
社会科の授業では「自由のない社会とはどういうことか」を生徒と一緒に考えてきました。
アリサ・リュウの父の物語は、その授業の延長線上にある実話です。
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