2025年10月13日、両国国技館が騒然となった。
リングに乱入したのは、なんと東京五輪柔道金メダリストのウルフアロン選手。
現在は新日本プロレスの練習生として、2026年1月4日の東京ドームデビューに向けて汗を流している。
柔道界の頂点を極めた男が、なぜプロレスの世界へ飛び込んだのか。
その理由が、実に爽やかで意外だった。


「好きだから」という、最強の理由
2025年6月9日、ウルフ選手は柔道の現役引退を発表した。
わずか2週間後の6月23日、新日本プロレスへの電撃入団を表明する。
記者会見での一言が、すべてを物語っていた。
「なぜプロレスを?と聞かれたら、好きだから」。
なんとシンプルな答えだろう。
理屈も計算もない。
ただ「好きだから」。
29歳の五輪金メダリストが、こんなにも純粋な言葉でキャリアチェンジを語るとは。
金メダル 置いてリングへ 夢追い人
柔道三冠を達成した男の「やり残しゼロ」宣言

ウルフ選手の柔道人生は、輝かしいの一言に尽きる。
2021年東京五輪で100kg級金メダル。
世界選手権優勝。
全日本選手権制覇。
史上8人目となる「柔道三冠」を達成した。
しかし2024年のパリ五輪では7位という結果だった。
それでも本人は「柔道でやり残したことはない」と言い切る。
三冠達成という目標をクリアし、次なる夢へ向かう。
そのフットワークの軽さは、100kg級の体格からは想像できないほど軽やか。
むしろ心の軽やかさ、と言うべきか。
表:ウルフアロン選手の主な実績
| 年 | 大会 | 結果 |
|---|---|---|
| 2017年 | 世界選手権 | 優勝 |
| 2019年 | 全日本選手権 | 優勝 |
| 2021年 | 東京五輪 | 金メダル |
| 2024年 | パリ五輪 | 7位 |
| 2025年 | プロレス転身 | 新日本入団 |
大学時代から温めていた「プロレスへの憧れ」
実は、この転身は突然の思いつきではなかった。
東海大学の学生だった2016年頃から、テレビ朝日の『ワールドプロレスリング』を毎週録画して観ていたという。
「裸一貫で戦う選手の格好良さに惹かれた」。
「柔道とは違った見せ方に魅力を感じた」。
そして「いつか柔道をやり切ったら、プロレスをやりたい」と心に決めていた。
つまり、約9年間温め続けた夢だったのだ。
これは単なる転職ではない。
人生をかけた「夢の実現」である。
畳からマットへ 人生もロールアウトして新天地
なぜ総合格闘技ではなく、プロレスなのか
多くの人が疑問に思ったはずだ。
「なぜ総合格闘技ではないのか」。
ウルフ選手の柔道の実力なら、総合格闘技でも十分に活躍できただろう。
過去には吉田秀彦や石井慧が格闘家に転身している。
しかしウルフ選手の答えは明確だった。
「試合前、試合、試合後、すべての生き様を見せるのがプロレス」。
「ウルフアロンという私を表現できるのもプロレスだ」。
つまり、彼が惹かれたのは「エンターテインメント」としてのプロレスなのだ。
勝ち負けだけではない。
言葉でも、態度でも、すべてで自分を表現できる世界。
それがプロレスだと、彼は理解していた。
かつてのジャンボ鶴田が「就職」としてプロレスを選んだのとは対照的に、ウルフ選手は「夢の実現」としてプロレスを選んだのである。
「変なプライドは邪魔になるだけ」の覚悟

五輪金メダリストがプロレスの「練習生」になる。
これがどれほどの覚悟を要するか、想像してみてほしい。
しかしウルフ選手は「変なプライドは邪魔になるだけ」と言い切った。
現在、月曜から土曜の午前中は新日本プロレスの道場で練習。
10歳近く年下の練習生やヤングライオンと一緒に汗を流している。
巡業バスでは「レスラーの先輩方の後ろ」に座る。
「思った以上にやっぱり大変ですよ」と本音も漏らす。
柔道を20年以上やってきたから体力には自信があったが、プロレスはまた別の体力が必要
「柔道の癖が強すぎる」という悩みも抱えている。
それでも「楽しいですけど」という言葉が印象的だった。
29歳、ゼロからのスタート。
金メダルの栄光も、三冠の実績も、すべて脇に置いて学ぶ姿勢。
この謙虚さこそが、彼の最大の武器かもしれない。
練習生 金の過去捨て また一から

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