
2025年8月19日、甲子園球場で繰り広げられた準々決勝。
県岐阜商vs横浜の一戦は、まさに「劇的すぎる展開」という言葉でしか表現できない死闘となった。
筆者も観戦しながら「これで試合は決まったな」と何度思ったことか。
しかし、その度に県岐阜商は不屈の精神で立ち上がり、ついに16年ぶり8度目の4強進出という歴史的快挙を成し遂げた。
延長11回の劇的サヨナラ―試合展開を振り返る
序盤から中盤:一進一退の攻防
試合は1回表、県岐阜商が先制点を奪うスタートとなった。
しかし、春のセンバツ王者である横浜も黙っていない。
両チームが一進一退の攻防を繰り広げる中、特筆すべきは県岐阜商の2年左腕・渡辺大雅の好投だった。
5回を1安打無失点で切り抜け、チームを支え続けた。
この時点で、公立校である県岐阜商が私立の名門横浜と互角以上の戦いを見せていることに、多くの観客が驚きを隠せなかっただろう。
延長10回表:「決まった」と思われた瞬間
そして延長10回表。
横浜が一挙3点を奪い、7−4とリードを広げた瞬間、筆者を含む多くの人が「これで決まったな」と思ったに違いない。
春夏連覇を狙う横浜の底力を見せつけた場面だった。
県岐阜商にとって、延長戦で3点差をひっくり返すことは容易ではない。
しかし、ここから見せた驚異の粘りこそが、この試合を歴史に刻む展開の始まりだった。
延長10回裏:県岐阜商の驚異の粘り
延長10回裏、県岐阜商の反撃が始まった。
そして、この回のキーマンとなったのが3年の捕手・小鎗稜也(6番)だった。
走者一掃の同点タイムリーを放ち、7−7の同点に追いついた。
この瞬間、甲子園のスタンドは割れんばかりの歓声に包まれた。
「これで決まった」と思われた試合が、再び振り出しに戻ったのである。
県岐阜商の選手たちの表情には、まだ諦めていない強い意志が宿っていた。
延長11回裏:坂口路歩のサヨナラ打で歴史的勝利
そして運命の延長11回裏。
タイブレーク制の中、県岐阜商の4番・坂口路歩(3年)にマウンドが託された。
この3年間、チームを牽引してきた主将格の選手である。
そして、坂口の打球がスタンドに向かって飛んでいく――。
サヨナラ勝ちを告げるその一打は、16年という長い歳月を一瞬で塗り替える、まさに奇跡の瞬間だった。
最終スコア:県岐阜商 8−7 横浜(延長11回タイブレーク サヨナラ勝ち)
勝利の立役者たち―キープレイヤー分析
坂口路歩(3年・4番):劇的サヨナラ打の主人公
県岐阜商の4番を任される坂口路歩。
この試合で見せたサヨナラ打は、彼の高校野球人生の集大成とも言える一打だった。
重要な場面で結果を出す勝負強さこそが、チームを16年ぶりの4強に導いた原動力である。
小鎗稜也(3年・捕手):10回裏同点タイムリーの一撃
延長10回裏の同点タイムリーを放った小鎗稜也。
捕手として投手陣をリードしながら、打撃でも勝負所で結果を出す。
まさにチームの要として機能した。
この一打がなければ、サヨナラ勝ちもありえなかった。
渡辺大雅(2年・左腕):5回1安打無失点の好投
わずか2年生ながら、5回を1安打無失点で切り抜けた渡辺大雅。
春のセンバツ王者・横浜打線を相手に、この投球内容は見事としか言いようがない。
来年度への期待も高まる逸材である。
16年ぶり4強の歴史的意義
県岐阜商の甲子園での軌跡と通算43勝の重み
今回の勝利により、県岐阜商の夏の甲子園通算勝利数は43勝となり、歴代単独10位に到達した。
これは単なる数字ではなく、長年にわたって甲子園で戦い続けてきた伝統校の証である。
2013年には大阪桐蔭の春夏春3連覇を阻止するなど、県岐阜商は常に甲子園で話題を提供してきた。
そして今回、16年ぶり8度目の4強進出という新たな歴史を刻んだ。
公立校として唯一の8強進出の価値
今大会で8強に進出した8校の中で、県岐阜商が唯一の公立校だった。
私立校が優位とされる現代の高校野球において、この快挙の価値は計り知れない。
地元岐阜県出身の選手たちで構成された「地元産チーム」としても注目を集めており、全国から優秀な選手を集める私立校とは対照的な存在として、多くの野球ファンの心を打った。
横浜の春夏連覇阻止が持つ意味
今回の勝利により、横浜の春夏連覇は阻止された。
春のセンバツを制した横浜にとって、この敗戦は痛恨の極みだろう。
しかし、それだけに県岐阜商の勝利の価値は高い。
強豪校を倒すことの難しさを知るからこそ、この勝利がいかに貴重なものかが分かる。
県岐阜商の選手たちは、日本一の舞台で真の実力を証明したのである。
次戦への展望と注目ポイント
16年ぶりの4強進出を果たした県岐阜商。
準決勝では、さらなる強豪校との対戦が待ち受ける。
しかし、この延長11回の死闘を制したことで得た自信は計り知れない。
特に注目したいのは、坂口路歩をはじめとする3年生たちの集大成としてのプレーと、渡辺大雅のような若い力の融合である。
この組み合わせが、さらなる奇跡を生む可能性は十分にある。
「これで決まったな」と何度も思わせられながら、その度に立ち上がってきた県岐阜商。
その不屈の精神こそが、16年ぶりの快挙を支えた原動力だった。
準決勝でも、その精神を胸に戦ってほしい。
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※本記事の情報は以下の信頼できる情報源から引用
毎日新聞 、中日新聞 、日刊スポーツ、岐阜新聞、神奈川新聞、Yahoo!スポーツ

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